高遊外売茶翁 ~日本に煎茶を普及させた文化人~

煎茶で真理を分かち合った風流人

▲売茶翁像(比喜多宇隆筆、佐賀県立博物館蔵)

出家、修行の日々…

煎茶道の祖、高遊外売茶翁は延宝3年、佐賀蓮池支藩の藩医の三男として誕生。11歳で龍津寺に出家し僧名は月海。

22歳で修行不足を恥じ江戸、仙台等各地へ出かけた。煎茶は長崎の中国僧から習ったとの説もある。また、隠元禅師が京都宇治に開いた、黄檗山(おうばくさん)萬福寺でも修業、中国伝来の文化に触れ、視野を広げた。

 

茶と禅のこころを伝える

晩年、龍津寺を弟弟子に託し再上洛。洛中に「通仙亭」という庵を構え、茶を売りながら禅や人の生き方を説いた。その姿に人々は親しみを込めて「売茶翁」と呼んだ。

通仙亭には文人墨客が集まり「売茶翁に一服接待されなければ一流の文人とは言えない」といわれ、伊藤若冲や池大雅などが集まり、若冲は売茶翁の肖像画も多数書き残している。漢文にも堪能で、漢詩や和歌を残し、書家としても超一級の人物であった。

年表(概略)

西暦(和暦) 数え齢 出来事

1675(延宝3年)

1 5月16日、柴山杢之進常名の三男として誕生。幼名菊泉
1686(貞享3年) 12 佐賀市の龍津寺に出家、僧名月海
1687(貞享4年) 13 黄檗山萬福寺第4代独湛禅師に面会を許される
1688(元禄元年) 14 龍津寺に帰り学問・修行に励む
1696(元禄9年) 22 体調を崩し、江戸・京都を経て仙台の萬寿寺月耕禅師のもとで修行
1707(宝永4年) 33 長崎で煎茶の知識を吸収
1731(享保16年) 57 龍津寺を法弟大潮にゆずり、志を果たすため上洛
1735(享保20年 61 東山に通仙亭を構え、禅を説きながら売茶の業を始める
1742(寛保2年) 68 高遊外に改名
1763(宝暦13年) 89 7月16日、京都で寂入

本名?あだ名?「売茶翁」の由来

売茶翁というのは実は名前ではなく、お茶を売る翁(おきな)という意味のあだ名のようなもの。本名ではないが、本人も時にはこの名前を記す事もあった。本名は柴山元昭、幼名は菊泉。僧侶としての名前は月海で、晩年は高遊外と名乗っていた。ちなみに高が姓で、遊外が名前だ。

難解だけど面白い!売茶翁のユーモア

「茶銭は黄金百鎰(いつ)より半文銭までくれしだい。 ただにて飲むも勝手なり。ただよりほかはまけ申さず」

 

(訳:お茶の代金は小判二千両から半文までいくらでも結構。ただで飲んでも結構。ただより安くはできません)

 

これは売茶翁が煎茶を売る時に掲げた言葉。ユーモアあふれる言い回しに、ぜひ本人に会ってみたくなる。

 

不憫な思いはさせない!茶道具への深い愛情…

死期を感じた売茶翁は売茶業を廃し、自分の茶道具も燃やしてしまう。これは自分の死後、俗世に渡り、売買されるようなことになれば、茶道具自身が悲しむとの思いであり、売茶翁の道具に対する愛情の表れだった。

 

自然に人が集う人柄 文化人が常に集う場所に

売茶翁のその自由な精神に魅かれるのか、周りには多くの人々が集まった。江戸時代の天才画家、伊藤若冲もその一人。人物画を描かなかった若冲がただ一人描いたのが売茶翁であり、売茶翁からもらった「丹青活手の妙、神に通ず(彩色の素晴らしは正に神業である)」の一行書を印にし、絵に捺している程心酔していた。

 

▲「売茶翁偈語」(ばいさおうげご)。売茶翁亡き後、大典顕常など当時の文化人がその口述をまとめた本。巻頭の肖像画は伊藤若沖作(肥前通仙亭蔵)。

 

▲「梅山種茶譜略」(ばいざんしゅちゃふりゃく)。売茶翁が記したお茶の歴史や作法などをまとめた本(肥前通仙亭蔵)。

ギャラリー

▲佐賀市の観光文化施設「肥前通仙亭」では、売茶翁ゆかりの資料や茶道具を展示。

▲肥前通仙亭の「煎茶体験セット」(500円)。ほかにも、石臼で抹茶を挽いて飲めるサービスもある。

▲売茶翁が伊藤若沖に送った「丹青活手の妙、神に通ず」の一行書き。(足利義満600年忌記念「若沖展」図録より)

▲肥前通仙亭で展示されている「楓図」。紅葉を楽しむ武士・僧侶・婦女子を描いた風俗画の一部で、画面左の人物が売茶翁とされる。

▲売茶翁が修行した黄檗宗総本山・萬福寺(京都府宇治市)には、売茶翁を祀る「売茶堂」があり、現在も月に一度売茶翁を仰ぐ「売茶忌」が執り行われている。

探訪コース

① 霊仙寺跡の茶園

日本茶栽培発祥の地。1192年に栄西禅師が中国から持ち帰ったお茶を、当時九州一の山岳仏教の聖地だった背振山腹で栽培した。

車で約40分

② 龍津寺

売茶翁が幼い時に出家した寺。現在はお堂が焼失し、小さな庵を残すのみ。売茶翁の顕彰碑や柴山家の墓が建っている。

車で約15分

③ 肥前通仙亭

売茶翁に関する資料の展示や情報発信の拠点。直筆の書など、ゆかりの品も充実。もちろん、美味しい煎茶も頂ける。

車で約5分

④ 佛心寺

「刺繍地蔵菩薩座像」が安置されている。売茶翁ともゆかりが深く、住職からも楽しい話が聞ける。

車で約5分

⑤ 大興寺

売茶翁ゆかりの黄檗宗の寺で、禅の体験や勉強会を定期的に開催している。

     

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